映像制作・動画制作のコラム
2020年4月28日
インバウンド向けの動画が注目されている理由とは?制作に欠かせないポイントや各自治体の事例を紹介
インバウンド向け動画で成果を出すためには、ターゲットの明確化や次のアクションにつなげる導線設計など、いくつか押さえておくべきポイントがあります。また、既存の事例から学べることも多いため、事前にチェックしておきたいところです。
今回の記事では、インバウンド向け動画の概要を踏まえつつ、制作のメリットや地域・自治体別の活用事例、インバウンド向け動画が注目されている理由、さらには制作のポイントについて解説します。
目次
インバウンド向け動画とは
インバウンド向け動画とは、外国人観光客向けに訪日を促す目的で制作される動画のことです。そもそもインバウンド(inbound)とは、日本語に直訳すると「外から内へ入り込む」「内向きの」という意味の英単語です。業界によって異なる意味合いで使われていますが、観光業界では一般的に「訪日旅行」「訪日外国人」を指します。
訪日外国人が対象のビジネス活動は「インバウンドビジネス」と呼ばれていますが、その一種がインバウンド向け動画です。
インバウンド向け動画のメリット
インバウンド動画を制作することで、以下の3つのメリットを得られます。どのメリットもインバウンドビジネスに大きな恩恵をもたらすため、詳細をきちんと把握しておきましょう。
- ●言葉の壁を乗り越えて魅力を伝えられる
- ●観光を疑似体験してもらえる
- ●SNSで拡散されやすい
言葉の壁を乗り超えて魅力を伝えられる
インバウンド向け動画は、おもに映像と音声で構成されています。メインは映像で、テキストや静止画と比べて直感的に内容を理解しやすいうえ、日本語の理解が必須ではないため、言葉の壁を乗り越えて日本の魅力を伝えられることがメリットです。
日本語のナレーションやインタビューシーンが入っていても、外国語のテロップや字幕を追加すれば、あらゆる国の視聴者に対応できます。また、動画はテキストや静止画より情報伝達能力に優れているため、短時間で多くの情報を伝えられることもメリットです。
観光を疑似体験してもらえる
インバウンド向け動画を活用すれば、日本を疑似的に観光するリアルな体験を提供できます。
例えば、パンフレットのように文章や写真がメインとなる媒体は、立体的なイメージが湧きにくいため、観光地の魅力を伝えようとしても情報が断片的になりがちです。一方、動画ならドローンで撮った迫力ある風景の映像を使用したり、伝統料理を調理する様子を見せたりすることが可能なので、まるで自分がその場にいるかのような臨場感を演出できます。
観光の疑似体験を提供すれば、外国人観光客の期待感が高まるため、集客にも良い影響をもたらすでしょう。
SNSで拡散されやすい
インバウンド向け動画を制作すれば、X(Twitter)やInstagramといったSNSでの拡散が見込めることもメリットです。視聴者の共感や感動を生み出せる短尺の動画は、一つのコンテンツとしても質が高く、拡散されやすい傾向にあります。
また、外国人観光客の多くは旅行情報をSNSで調べているため、SNSでインバウンド向け動画が拡散されると、広告費を抑えながらターゲット層にリーチできる点もメリットです。地域の認知度向上にもつながるので、さらなる集客効果が期待できます。
【地域・自治体別】インバウンド向け動画の活用事例
インバウンド向け動画を制作する場合、まずは実際に成功した事例をチェックしてみましょう。他県や他市の動画には、有益なヒントが潜んでいる可能性もあります。
地域・自治体別にインバウンド向けの動画の活用事例を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- ●秋田県:秋田県ツーリズム
- ●群馬県:Kusatsu Onsen,JAPAN-Summer-
- ●新潟県魚沼市:Uonuma-City winter ver.
- ●福島県:LAST SAMURAI in AIZU
- ●岐阜県多治見市:多治見市インバウンドPV
- ●大阪府:ASIAN GATEWAY OSAKA
- ●島根県出雲市:Izumo, Japan-出雲
- ●香川県:VISIT KAGAWA Promotion
- ●大分県:Onsenken Oita Broadcast“OOB”News
- ●沖縄県:The Secret is Out
秋田県:秋田犬ツーリズム
秋田県がインバウンド向けに配信した「秋田犬ツーリズム」の動画は、慌ただしい毎日を送っている1人の外国人女性が秋田犬の写真を見て、秋田県に訪れるところから始まります。地元の方々に優しく迎えられ、かわいい秋田犬と触れ合ったり、豊かな自然や伝統芸能を楽しんだりしながら癒されていく、ストーリー仕立ての構成です。
ナレーションや字幕は一切入っていないので、映像に集中できるPR動画となっています。
群馬県:Kusatsu Onsen,JAPAN-Summer-
群馬県の草津温泉の観光PR動画は、ほぼ映像とBGMのみで構成されているシンプルな内容です。美しい山の情景や草津の町並みはもちろん、小学生が登校する様子など日常感あふれるシーンが公開されています。ドローンやスタビライザーも使って撮影されているため、全体的に映像がダイナミックで臨場感にあふれており、実際に草津温泉を訪れたかのような雰囲気を感じられる動画です。
こちらの動画は夏に撮影したものですが、ほかにも春・秋・冬の草津温泉を撮影した動画 が公開されています。
新潟県魚沼市:Uonuma-City winter ver.
新潟県魚沼市の観光PR動画は、あえてその町には「何もない」という一見ネガティブなキーワードからスタートします。
しかし、訪問者である男性は少しずつ地域の文化に触れていくことで、はじめにネガティブなワードとして使われていた「何もない」というキーワードが、その町の文化や美しい景色を作り上げている源であるということに気付いていき、最後にはポジティブなワードに意味が変わっていきます。
自虐調のコメディタッチなPR動画は一つの手法として確立されていますが、このPR動画のすごいところは、ネガティブに使われたキーワードの意味を最後にひっくり返してしまう説得力のある映像美や演出にあります。町の気概を感じる素晴らしいPR動画の一つといえるのではないでしょうか。
福島県:LAST SAMURAI in AIZU
福島県の「LAST SAMURAI in AIZU」は、フランス人のフェンシング選手4人が福島県会津地方の道場を訪れ、剣道を学びながら少年少女と交流する動画です。剣道の型や動きだけではなく、礼節や心構えといった精神面の修行に取り組む様子も収録されています。
動画の後半では、フェンシング選手と道場門下生との試合も行われており、迫力ある立ち回りを見ることができます。また、フェンシング選手たちが伝統工芸を体験したり、名物を食べたりする様子も映し出されているため、剣道と会津地方の両方の魅力が伝わる内容です。
岐阜県多治見市:多治見市インバウンドPV
「多治見市インバウンドPV」は、岐阜県多治見市の特産品である焼き物をメインに据えつつ、多治見の町並みや自然の風景をまとめた動画です。学生が帰宅する様子や高齢者が世間話を楽しむ様子、地元のイベントが盛り上がる場面など、日常的なシーンから特別感のあるシーンまで公開されています。
外国人観光客の共感を得られるよう、いくつかの場面で外国人が登場しています。さまざまなシーンの合間に、筆を用いて美しい火の鳥を描く様子が映し出されるのも印象的です。
大阪府:ASIAN GATEWAY OSAKA
ハイテンションな音楽とともに始まる大阪の観光PR動画は、15分尺と内容の詰まった内容となっています。大阪の観光スポットや空港を含めた交通機関の利便性、食、宿泊施設、デパートなどの買い物施設、歴史や文化などを具体的に紹介する内容となっており、初めて日本を訪れる観光客に安心感をもたらす内容です。
動画の最後には「大阪人のおもてなし」というフレーズが用いられますが、おもてなしはこの動画から始まっているという印象を受けるほど親切な動画です。
島根県出雲市:Izumo, Japan-出雲
島根県出雲市の観光PR動画は、出雲大社をはじめとする観光名所はもちろん、川・湖・海岸・伝統工芸・食など、出雲市のさまざまな魅力を堪能できる内容です。そばを打つ音や海岸での波音、海鳥の群れが一斉に飛び立つ際の羽音など、BGMとともに場面ごとの音も入っています。
こちらの動画は2018年3月に投稿されましたが、2025年4月時点で再生回数は1,200万回を突破しているので、インバウンドビジネスに大きく貢献していると見られます。
香川県:VISIT KAGAWA Promotion
「香川県=うどん県」というイメージをしっかりとオープニングから持って来る香川県の観光PR動画には、うどんへの誇りが強く感じられます。うどんは現在海外でも広く親しまれる日本食の一つ ですので、日本人の私たちからすれば「いきなりうどんで大丈夫かな?」と少し不安に思われるかもしれませんが、ご心配なく。
うどんの紹介のあとは点在する島を一つひとつ紹介し、美術館や神社、お遍路コースなどを美しいビジュアルであますことなく紹介しています。
大分県:Onsenken Oita Broadcast“OOB”News
温泉の県といえば大分。国内向けの観光PR動画で流行ったシンクロならぬ「シンフロ」の映像から始まる本作品は、ニュース番組の演出を取り入れアナウンサーが詳しく大分について紹介していくというスタイルで大分の魅力を伝えています。
温泉以外にも神社仏閣、食などの説明と合わせて映し出される過度な演出を避けた風景や料理の映像からは、大分の静謐な美が存分に伝わってくるようです。
沖縄県:The Secret is Out
沖縄県の制作したこちらの観光PR動画は、ドキュメンタリーとして作られたオリジナリティあふれる作品です。
出演者は国籍の異なる6人の外国人たち。しかも彼らは何らかの秘密を自分の大切な人に対して持っています。
その心の葛藤や悩みなどが、沖縄での体験を通してほぐれていく様子を映したこの作品は、沖縄の自然や神秘的な要素が訪問者をリラックスさせてくれる不思議な力を持った島であることを伝えています。
インバウンド向け動画が注目されている理由
近年、日本に訪れる外国人観光客が急増しており、その影響からインバウンド向け動画への注目度も大きく上昇しています。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、2020~2022年は訪日外客数が激減していました。しかし、流行が収まり始めた2023年から徐々にではあるものの、回復傾向が続いている状況です。
2023年と2024年月別訪日外客数を比較してみると、計測できている月はいずれも2024年が上回っています。 2025年は4,000万人超えが予想されているため、今後も訪日外客数の増加は続く見込みです。
出典:グラフ一覧ページ|日本の観光統計データ|日本政府観光局(JNTO)
さらに、訪日外国人旅行者1人当たりの旅行支出額(旅行・レジャー目的)を比較した場合、 2019年は15万5,281円でしたが、2024年には22万3,431円まで増えています。
出典:データ一覧 | 日本の観光統計データ|日本政府観光局(JNTO)
上記のデータを踏まえると、観光業で集客を成功させるためには、外国人観光客をターゲットとした戦略が極めて重要です。それにともない、インバウンド向け動画にも注目が集まっています。
インバウンド向け動画制作のポイント
インバウンド向け動画を制作する場合、いくつか意識すべきポイントがあります。
- ●ターゲットを明確にする
- ●地域特有のオリジナル要素を入れる
- ●ストーリー性のある構成にする
- ●次のアクションにつながる導線を設計する
- ●SNSを積極的に活用する
- ●BGMにもこだわる
広告効果を十分に発揮するためにも大切な要素なので、きちんと押さえておきましょう。
ターゲットを明確にする
インバウンド向け動画の制作が決まったら、まずはターゲットを明確にすることが大切です。ターゲットの属性や家族構成、日本を訪れたいと思った理由などを事前に設定し、ペルソナ(仮想の人物像)を作ると、動画の方向性が定まってアピールすべき部分も見えてきます。
例えば、アジア系の観光客は滞在時間が短い傾向にあるので、興味のある観光スポットをなるべく多く回りたい人が多いと予想されます。一方、欧米系の観光客は滞在時間が長い傾向にあるため、日本の料理や伝統文化をじっくり楽しみたい人が多いでしょう。
また、インバウンド向け動画は外国人をターゲットとするため、動画内に登場する人物も同じ属性の外国人を割り当てると、親近感を与えやすく効果的です。特に同じ属性の外国人がメインで登場している動画は「自分ゴト化」しやすく、視聴者に興味を持ってもらえる可能性も高まります。
地域特有のオリジナル要素を入れる
地域特有のオリジナル要素を動画に入れ込むことで、ほかの地域にはない魅力を伝えられるので、結果的に差別化を実現できます。特に伝統的な行事・文化や歴史ある観光スポット、その土地だけの名物グルメや特産品などが詰まった動画は、視聴者の記憶に残りやすいため、インバウンドの集客施策に打ってつけです。
例えば、沖縄県なら美しいビーチや南国フルーツ、京都府なら有名な神社仏閣や古風な町並みといった要素が強力な武器となるでしょう。
ストーリー性のある構成にする
集客につながる要素を動画に入れ込むことは重要ですが、単に美しい風景や特産品の映像を並べるだけだと、視聴者に「ここへ訪れて体験してみたい」と思ってもらえる可能性は低いでしょう。
ストーリー性のある構成にすれば、視聴者の感情に訴えかけやすくなるので、記憶に残るインパクトの強い動画に仕上がります。
先述の活用事例で紹介した動画にも、ストーリー性のあるものは多いため、参考教材になるでしょう。
次のアクションにつながる導線を設計する
インバウンド向け動画の本来の目的は、日本の魅力を知ってもらったうえで、外国人観光客を増やすことです。単に動画を見てもらうだけでは足りないので、視聴後すぐに次のアクションへ移行できるような導線を設計する必要があります。
例えば、動画の説明欄に旅行予約ページのリンクを記載したり、動画の最後にQRコードを表示して直接アクセスを促したりするなど、導線をさりげなく設けることが大切です。また、CTA(申し込みボタンや予約ボタンなど)を設置するのも有効となります。
導線をきちんと設計すれば、視聴者はWebサイトなどのリンクを探す手間を省けるため、購買や予約につながる可能性も高まるでしょう。
SNSを積極的に活用する
インバウンド向け動画は性質上、SNSで拡散されやすいというメリットがあります。より多くのターゲットに動画が届く可能性を高めるためには、SNSを積極的に活用することも大切です。
動画の内容によっては広く拡散し、自社の存在を知らない外国人にも見てもらえるチャンスが生じるため、なるべくターゲット層が多く利用しているSNSを選びたいところです。また、若年層をターゲットにする場合、InstagramやTikTokで見やすい縦型動画を制作すると、高い効果が期待できます。
BGMにもこだわる
インバウンド向け動画は映像がメインであり、解説のナレーションや出演者のセリフが一切ない作品もよく見受けられます。ただ、BGMにもこだわって制作すれば、視覚と聴覚の両方にアプローチできるため、動画の魅力を底上げすることが可能です。
地域特有の伝統的な音楽や映像を引き立たせるBGMなど、取り上げるコンテンツの内容に適したものを選びましょう。
インバウンド向け動画を制作する際の注意点
インバウンド向け動画の制作では、以下のような点に注意しましょう。
動画の尺を長くしすぎない
インバウンド向け動画に適した尺は、配信先によって変動します。
例えば、Webサイトに掲載するなら最大3分程度が適切ですが、YouTube広告として出稿するなら12~60秒が推奨されています。
参照:インバウンド向けプロモーション動画の作り方|日本政府観光局(JNTO)
また、InstagramやTikTokなどのSNSで配信する場合、目安は15秒程度です。 動画の尺が長すぎると、途中で飽きられてしまう可能性もあります。
情報を盛り込みすぎない
動画は情報量の多い媒体ですが、地域の魅力を伝えようとして情報を盛り込みすぎると、テーマにブレが生じやすくなります。結果的に何を伝えたいのか理解しにくい、かえって視聴者の記憶に残らない動画になってしまいがちです。
制作の際はターゲットを決めたうえで、動画のテーマに沿った材料を厳選し、構成に組み込んでいく必要があります。
宣伝色のない高クオリティなインバウンド向け動画を作りたいならShibuya Movieにお任せ
インバウンド向け動画を制作する場合、さまざまな要素を考えながら取り組む必要があるので、特に制作経験がない方は頭を悩ませることも多いでしょう。動画制作ソフトやビデオカメラの導入、製作スタッフの手配といった準備にも時間がかかるため、外注も視野に入れたいところです。
Shibuya Movieは、目的やターゲットに沿った高クオリティな動画を制作しています。弊社にご依頼いただければ、宣伝色を極力排除したシネマティックなインバウンド向け動画を作ることが可能です。
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まとめ
インバウンド向け動画を制作すれば、言葉の壁を乗り越えて地域の魅力を伝えたり、観光の疑似体験を提供したりすることができます。SNSでの拡散も期待できるため、インバウンドビジネスの発展に大きく貢献してくれるでしょう。
ただし、これらのメリットを得るためには、コンテンツや構成に関するポイントを押さえたうえで、魅力的な動画を作る必要があります。専門的なスキルや機材も欠かせないため、専門家に外注するのも一案です。
初めての映像制作の方にも、ご不安なくご利用いただけるよう制作の流れやご活用方法まで、
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