映像制作・動画制作のコラム
2025年1月22日
学校教育における動画の活用例|動画を利用するメリット、注意点も紹介
学校教育の現場では、GIGAスクール構想によりICT環境の整備が進み、授業で動画を利用する機会も増えました。
学校教育での動画の活用には、さまざまなメリットがあります。しかし同時に、著作権法に触れたり個人情報を流出したりしないように注意が必要です。
この記事では、学校教育におけるGIGAスクール構想の概要と授業での動画の活用例とメリット、注意点をお伝えします。
また、授業で活用できる動画教材や、動画を自主制作する際のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
学校教育におけるGIGAスクール構想とは
文部科学省が推進するGIGAスクール構想とは、小・中学校、高校などの教育現場におけるICT環境の充実を図る取り組みのことです。
GIGAスクール構想ではハード環境の改善として、通信ネットワークの整備や、生徒1人につき1台のタブレット端末の配備を進めています。
2024年度の時点で小・中学校、公立高校のほとんどの学校で1人1台の端末導入が完了しています。
このことからもわかるように、現代の学校教育において動画の活用は非常に重要な要素の一つとなっています。
文部科学省や民間企業による動画教材
経済産業省や民間企業は、授業で活用できる動画教材を提供しています。ここでは4つの動画教材を紹介します。
STEAMライブラリー|経済産業省
STEAMライブラリーは、経済産業省が推進する「未来の教室」事業の一環として開発された、動画教材のプラットフォームです。
「未来の教室」事業は、「学びのSTEAM化」「学びの自律化・個別最適化」「新しい学習基盤づくり」の3つの柱を掲げています。
STEAMライブラリーは、このなかの「学びのSTEAM化」を実現するための取り組みの一つです。配信されている動画は、学習指導要領への紐付けや学習指導案の提供など、学校の授業でも活用しやすく工夫されています。
また、動画を探す際はキーワード検索だけでなく、SDGsのテーマや対象学年ごとなどにフィルターをかけられるといった、使いやすさにも配慮されています。
参考:
経済産業省「STEAMライブラリー」
NHK for School|日本放送協会
NHKが制作するNHK for Schoolは、2,000本以上の教育向け番組のほか、学習のポイントをまとめた約7,000本の動画クリップを配信するWebサイトです。
学年ごとや教科、単元ごとに分かれた解説動画や番組のほか、それらを活用した授業の実践リポートも配信しています。
また、教科書や学習指導要領から動画を探せる「先生向けモード」があり、授業に活用できる教材が簡単に見つけやすくなっています。
さらに、特設ページの「おうちで学ぼう!」では、子どもたちの家庭での学びを応援する取り組みも行なっています。
参考:
日本放送協会「NHK for School」
マイクロソフトGIGAスクールパッケージ|Microsoft
マイクロソフトGIGAスクールパッケージでは、Microsoft 365 Educationの活用法や、対話的で深い学びができる授業展開の実践事例、Teamsでの授業実践方法などの紹介動画を掲載しています。
参考:
Microsoft「Microsoft 365 Learning Accelerators 製品紹介/使い方ガイド」
GIGAスクール構想をAppleと|Apple
Webサイト「GIGAスクール構想をAppleと」では、iPadの基礎や授業でのiPad活用アイデアのほか、単元ごとにiPadを活用した授業プランを提案する「授業ガイド」などが掲載されています。
なお、授業ガイドは、PDF形式でダウンロードも可能です。
参考:
Apple「GIGAスクール構想をAppleと」
学校教育における動画の活用例
ここでは、学校教育における動画の活用例を2つ紹介します。
YouTubeなどの動画を授業に用いる
授業での動画の活用例として、YouTubeや録画したテレビ番組、動画教材を授業に用いる方法があります。
学校の授業で録画したテレビ番組を見せるのは、著作権法第35条のもと、一定の条件を満たす場合において認められています。
よって、授業に利用するという目的の範囲内であれば、授業中にこれらの動画を流すことが可能です。
YouTube上の動画も利用規約上、配信者が「著作権侵害をしていない」と確認したうえでアップロードされており、授業に利用可能です。
ただし、明らかに違法アップロード動画とわかるものは、閲覧を避けましょう。
運動会や文化祭の様子を保護者などに配信する
特別活動の様子を撮影しておき、保護者などに配信するのも活用例の一つです。運動会や文化祭などの特別活動の様子は、一定の条件を満たせば保護者などにインターネット配信できます。
著作物に関しては、リアルタイム配信の場合、補償金の支払いを条件として無許諾で実施できます。
一方、オンデマンド配信、つまり視聴者が好きなときに視聴できる形式での配信の場合は、あらかじめ視聴期間を設け、補償金を支払うことで実施可能です。
期間終了後にはコンテンツを抹消・破棄する必要があります。また、URLの拡散や映像の保存、インターネット上への転載などを行なわないよう、保護者など配信を受ける側から事前に同意を得る必要もあります。
いくつか条件はあるものの、これら条件を満たせば配信が可能なため、導入を検討してみましょう。
学校教育の授業で動画を使用するメリット
学校教育の授業で動画を活用すると、さまざまな効果が期待できます。学校教育の授業で動画を使用するメリットを見ていきましょう。
授業内容への理解を深めることができる
学校教育で動画を使用すると、授業への理解が深めやすくなるメリットがあります。
板書をノートに書き写すだけでは、理解するのが難しい授業内容もあるでしょう。動画を使用すれば、文字や口頭の説明ではイメージしにくい情報も、動きが付いて理解しやすくなります。
また、参考映像も活用すると生徒の興味が多方面に拡がり、より深い学びにつなげやすくなります。
情報を効率的に伝えることができる
短時間で多くの情報を効率的に伝えられるのも、授業に動画を使用するメリットです。
例えば、実際に体験するのが難しい実験や観察の様子は、動画で見せることで手間や時間をかけずに情報を伝えることが可能です。
生徒が自分のペースで復習できる
動画を中心に据えた授業であれば、生徒があとから自分のペースで復習しやすくなります。
動画であれば、学校を欠席した生徒も自宅で授業が受けられます。
問題の解説を聞き逃した場合や授業の速さについていけない生徒も、安心して学習に取り組めるでしょう。再生速度を変えたり巻き戻したりできるのは、口頭のみで進める授業にはない動画ならではの利点です。
学校教育の授業で動画を使用する際の注意点
授業で動画を使用する際には、注意点も把握していないと、大きな問題につながる恐れがあります。ここでは、学校教育の授業で動画を使用する際の注意点を4つ解説します。
YouTubeなどに動画を配信する際には公開範囲に注意する
動画を配信する際は、必ず公開範囲を設定しましょう。
著作物を含む動画を配信する場合、授業での使用範囲を超えていると、授業目的公衆送信補償金制度の対象にならず著作権法に触れるためです。
例えばYouTubeで配信する場合は、以下3つのなかから公開範囲を選択できます。
- ●公開……誰でも
- ●限定公開……URLを知っている人のみ
- ●非公開……チャンネルの管理者のみ
自作の動画を授業用として配信する際は、「限定公開」が適しています。なお、限定公開は、URLを知っていれば誰でも視聴できるため、取り扱いには十分注意しましょう。
個人情報に配慮する
授業や特別活動の様子を撮影する場合は、個人情報の流出にも気を配る必要があります。
生徒や保護者が動画に映るのであれば、本人に事前同意を得て肖像権を侵害しないようにしましょう。
また、インターネットを経由して授業を配信する場合、文芸作品や新聞、写真、音楽などの著作物を使用して良いのかも気になるところでしょう。
従来、インターネット配信する授業で著作物を使用する際は、原則として著作者の許諾が必要でした。
しかし、現在は「授業目的公衆送信補償金制度」によって、保証金を支払えば、インターネット経由で配信する授業の教材として、さまざまな著作物を無許諾で使用できます。
これは授業だけでなく、生徒会や修学旅行などの特別活動、ホームルームなどで使用する動画も対象です。
なお、保護者会や教職員会議などで使用する動画をインターネット配信する場合は、対象にならないので注意しましょう。
生徒のインターネット環境を把握する
生徒の自宅のインターネット環境が整っているかも確認しておきましょう。
「自宅にインターネット環境がない」「通信容量の関係で動画を視聴できない」といった家庭もあるため、インターネット環境の事前調査は欠かせません。
教員がIT関連の知識を身に付ける
動画の撮影や編集、配信にはある程度のIT知識が必要です。
担当する教員のITリテラシーが低いと、授業の進行に影響を及ぼしたり、最悪の場合、法に抵触したりするリスクがあります。
また、教材となる動画を作る場合は内容に応じた撮影・編集スキルも必要です。
学校教育で使用する動画を制作するポイント
授業で使用する動画は、自作することも可能です。ここでは、学校教育の授業で使用する動画を自主製作する際のコツを2つ紹介します。
シナリオを工夫する
ただ伝えたい情報を詰め込んだ動画では、生徒の興味を引けません。動画を制作する際は、企画やシナリオをよく考えて行ないましょう。
ストーリー仕立てのシナリオでイメージしやすくしたり、途中でクイズを挿入したりと、飽きないための工夫を取り入れてみてください。
動画を活かした表現を用いる
動画は声や効果音、スライド、テロップなどを組み合わせることで、表現の幅が拡がり、より生徒の興味を引き立てるものに仕上がります。授業をただ撮影するだけでなく、動画の強みを活かした演出を取り入れましょう。
ただし、内容次第では高い撮影・編集スキルが必要です。良質で息の長い動画を作りたいのであれば、プロの制作会社への依頼も検討してみるとよいでしょう。
コストはかかりますが、授業の映像や挿入するスライドを用意することで、費用を抑えながら制作することも可能です。
まとめ
学校教育における動画の活用例としては、「YouTubeなどの動画を授業に用いる」「授業を録画して配信する」「保護者向けに活動の様子を配信する」が挙げられます。
学校教育で動画を活用すると、生徒が授業内容をイメージしやすくなったり、時間や場所にとらわれず自習できたりするといったメリットがあります。
ただし、動画を配信する場合は、公開範囲の設定や個人情報流出に注意してください。また、各家庭のインターネット環境の確認も忘れずに行ないましょう。
授業で使用する動画は自作することも可能ですが、内容を充実させたい場合は、動画制作のプロへ委託するのもおすすめです。
Shibuya Movieでは、学校教育のさまざまな場面で活用できるハイクオリティな動画制作が可能です。興味のある方は、ぜひお問い合わせください。