映像制作・動画制作のコラム
2022年8月23日 最終更新日:2025年11月6日
ドキュメンタリー動画制作のコツとは?基本の作り方、動画撮影の手法を解説

ドキュメンタリー動画とは、インタビューや風景などの映像を通して、特定のテーマを伝える映像作品のことです。ノンフィクションがベースとなりますが、視聴者の心をつかむためには、事実を伝えると同時に起承転結を意識したストーリーも考えなければなりません。
本記事では、ドキュメンタリー動画の概要を踏まえ、基本的な制作の流れ、4種類の撮影手法、制作における5つのコツについて解説します。ドキュメンタリー映画のように大掛かりなものだけでなく、動画広告やユーザーインタビューのドキュメント、Vlogのような記録動画などにもすぐに応用できます。
初めてドキュメンタリー動画を制作する方は、基本的な撮影の流れや撮影手法などのコツを把握しておきましょう。
ドキュメンタリー動画の基本情報

ドキュメンタリー動画の概要を踏まえ、動画と映画におけるアプローチの違いについて解説します。
ドキュメンタリー動画とはどのようなものを指すか
ドキュメンタリー動画とは、特定のテーマをありのままに伝える映像作品 のことです。「記録映画」とも呼ばれており、以下のような映像が代表的です。
- ●インタビュー取材
- ●1日密着
- ●動植物の生態観察
- ●街並みなどの景色の観測撮影
ドキュメンタリー動画が通常の映像作品と異なるのは、内容が「ノンフィクション」であることです。脚色などは一切せずに、あくまでも事実や出来事を映し出します。
そのため、ドキュメンタリー動画を制作する際は、ナレーションを加えたり、インタビューに補足情報を加えたりするなど、その出来事がより伝わりやすいように工夫することが大切です。
ドキュメンタリーの「動画」と「映画」の違い
ドキュメンタリー映画は、エンターテインメントのジャンルとして確立されており、特に2021年は、ドキュメンタリー映画がこれまでにないほど充実した年だったといわれています。
なかでも、スパイク・リー監督によるデヴィッド・バーンのコンサート映画『アメリカン・ユートピア』は、エネルギッシュなドキュメンタリー作品として大きな注目を集めました。同作品は、単なるコンサートのドキュメントではなく、人種問題をはじめとするさまざまな社会問題に対し、音楽を通して回答を模索するような内容となっています。
また、2021年4月23日に公開されたチェコの映画『SNS -少女たちの10日間-』も、強烈なドキュメンタリー作品として話題を呼びました。SNSを題材としたドキュメンタリーはこれまでも数多く制作されていますが、その「闇」の部分にフォーカスし、制作サイドからガッツリと「仕掛けていく」という手法は画期的でした。
このように、ドキュメンタリー作品はジャンルとして歴史も長く、決して新しい手法ではありませんが、常に注目を集めています。
ドキュメンタリー映画は史実をただ伝えるのではなく、制作者の意図や関係者の思いなどを盛り込み、起承転結のあるストーリーを作るのが特徴です。
一方、ドキュメンタリー動画の場合、ありのままを伝えることを意識するのが基本です。社会問題や人間の本質などのリアリティを追求することで、視聴者からの共感を得ることにつながるでしょう。
なお、脚本ありきのドキュメンタリーは、「ヤラセ」になるため注意が必要です。ノンフィクションでも制作者の意図は存在しますが、構成どおりの展開にするために誘導するような行為は避けましょう。
ドキュメンタリー動画の基本的な作り方

ドキュメンタリー動画を作る流れを、順を追って解説します。
- 1.ドキュメンタリーのテーマを設定する
- 2.ドキュメンタリーのテーマについて情報収集する
- 3.ストーリー・構成を作成する
- 4.撮影機材を準備する
- 5.動画撮影のスケジュールを立てる
1.ドキュメンタリーのテーマを設定する
ドキュメンタリー動画を作るときは、動画を通して伝えたいテーマを決めることが大切です。
ドキュメンタリーのテーマは多岐にわたり、社会問題、地域の歴史や文化、動物や植物、スポーツなどさまざまです。社会的意義があり、視聴者の心を揺さぶるような内容を選ぶとよいでしょう。例えば、客足が遠のいた商店街の活性化や伝統工芸の継承など、身近なテーマでもメッセージ性のあるドキュメンタリー動画を制作できます。
また、知られていない出来事や真相の裏側を取り上げ、「新たな視点」を伝えることもドキュメンタリー動画ならではの手法です。関係者の証言などで当時の状況を掘り下げることで、視聴者に考察する機会や感動を与えられるうえ、ドキュメンタリー動画としてストーリーに深みも出すことができます。
テーマはドキュメンタリー動画の要になるため、視聴者を引き込むことを意識して選びましょう。
2.ドキュメンタリーのテーマについて情報収集する
テーマを設定したら、そのテーマについて可能な限り多くの情報をリサーチしましょう。ドキュメンタリー動画はリアリティを追求する必要があるため、信頼性の高い情報源から情報収集をすることが基本です。
また、多角的な視点で情報を集めるために、現場でのフィールドワークも欠かせません。フィールドワークでは、地域の雰囲気や人々の暮らしを把握できるうえに、住民へのインタビューでリアリティのある意見を収集できます。
文献や書籍、映像など収集した資料の情報に加え、現地調査や関係者のインタビューを行なうことでテーマへの理解度が深まります。
3.ストーリー・構成を作成する
つづいて、リサーチで収集した情報をもとに、動画全体のストーリーと構成を考えましょう。ドキュメンタリー動画では、事実をベースにたどると予想されるストーリーを考えておく必要があります。視聴者の共感を得たり、感情移入できたりする作品に仕上げるには、起承転結を踏まえたストーリー作りが不可欠です。
また、ドキュメンタリー動画の構成を考える際は、ターゲット層を明確にしておかなければなりません。若者向けのテーマならテンポの良さを意識する、高齢者向けならナレーションをベースに落ち着いた雰囲気にするなど、適した編集が異なるためです。
なお、ドキュメンタリー動画のストーリーを視覚化するため、「ストーリーボード」を作成することもあります 。ストーリーボードとは、動画やアニメなどの制作時に、ストーリーやシーンの展開を明確にするもので、絵コンテほど本格的なものではありません。
ストーリーボードにシーンの流れやナレーション、BGMなどを書き出しておくと、撮影がスムーズに進むだけでなく、編集の効率化を図ることも可能です。
4.撮影機材を準備する
ドキュメンタリー動画を作るときは、メッセージが伝わるような映像にすることが大切です。映像美はリアリティの追求に役立つだけでなく、視聴者をストーリーに引き込むことができます。
使用する撮影機材は何でも構いませんが、「カメラ」はテーマに合った「画質」で選ぶとよいでしょう。例えば、自然の風景を撮影するなら、より美しい映像が撮影できる4Kなどの高画質のものが適しています。人物のインタビュー映像であれば、フルHDでも問題ありません。ただし、インタビューをする際は、クリアに音声を録音できる機材が必要です。
また、スマートフォンのカメラも性能が向上しており、高品質な映像を手軽に撮影できます。必ずしも高性能の機材を使う必要はなく、使い慣れた機材でスムーズに撮影できることも重要な要素です。
5.動画撮影のスケジュールを立てる
動画のストーリー決めやストーリーボードを作成する時点で、撮影のスケジュールも同時に組んでいきます。
インタビュー撮影の場合は、当日だけでなく移動日や宿泊の有無も含めたスケジュールを立てる必要があります。さらに、屋外でのロケは事前の撮影許可が必要になるため、天候を考慮して撮影日程を決めることも大切です。
ドキュメンタリー動画の制作において、撮影期間を短く設定してしまうと、思うような作品に仕上がらない場合があるため注意しましょう。
また、予算内でより良い動画を撮影するには、効率的なスケジュールで撮影コストを削減することも重要です。無駄のないスケジュールを立てることで、使用する機材のレンタル費用、スタッフの人件費などの無駄を省けます。
6.スケジュールどおりに動画を撮影する
撮影当日は、事前に構成で決めたシーンを、組み立てたスケジュールのとおりに撮影します。インタビュー、作業風景、オープニングとエンディングなど、さまざまな素材を撮影していきましょう。
現場の様子を収めた補足映像など、素材をたくさん撮影しておくことがドキュメンタリー動画の制作のポイントです。ストーリーとは直接関係がない映像であっても、後述する「インサート映像」として活用できます。
また、撮影時のカメラアングルやライティング、サウンド収録の技術なども、動画の質に影響するため、シーンによって撮影方法にこだわることも大切です。
7.撮影した動画を編集する
撮影がすべて終了したら、作品に仕上げる編集作業に移ります。不要な部分をカットし、ストーリーとして映像をまとめていきましょう。
ナレーションやBGM、字幕を組み合わせることで、より見やすく、感情移入しやすい作品に仕上げていきます。ただ単に映像をつなぎ合わせるだけでなく、視聴者を引き込むクリエイティブな作業が必要です。
BGMや効果音を追加する際は、動画のテーマに合ったものを適切なタイミングで入れましょう。オープニングやストーリーの分岐点など、部分的に取り入れることでメリハリのある動画になります。
また、視聴者が最後まで飽きずに見られるよう、ストーリーのテンポやリズムを意識した編集も必要です。感動や緊張感のあるドキュメンタリー動画にするため、シーンの配置やカットのタイミングを工夫することもあります。
ドキュメンタリー動画の撮影手法

ドキュメンタリー動画を撮影する手法は、以下の4種類が代表的です。撮影手法の概要と特徴について解説します。
- ●インタビュー型
- ●観察型
- ●再現型
- ●詩的表現型
インタビュー型
インタビュー型のドキュメンタリーでは、取材対象者の証言や意見を通じて物語を構築します。ドキュメンタリー動画に多い撮影手法で、過去の出来事を振り返ったり、真実を突き止めたりするストーリーに向いています。
対象者の話を通じて価値観や背景を共有することで、テーマの信憑性を高めるだけでなく、視聴者との感情的なつながりを生むことも可能です。
また、さまざまな視点を取り入れることで、テーマをさらに深掘りすることにもつながるでしょう。
観察型
観察型のドキュメンタリーでは、事象や人物をありのままにとらえ、編集や脚色を最小限に抑えることで現実性を追求します。長期間をかけて密着取材をする「情熱大陸」のように、 ドキュメンタリーのテーマをカメラが追い続け、近い距離で撮影するのが観察型の大きな特徴です。
言葉での説明は最小限にとどめ、カメラは第三者の視点で撮影するため、対象は「主人公」になります。この手法では、映像そのものの「語る」力によって、視聴者の共感を得ることができるでしょう。
一方で、観察型は撮影期間が長くなる傾向があり、編集にも多くの時間がかかるという側面もあります。また、膨大な素材から意味のある瞬間を選び出し、ストーリーを構築する技術も求められます。
再現型
再現型のドキュメンタリーでは、インタビューや文献などを参考に過去に起きた出来事の真実を描きます。過去の資料に基づいてストーリーを構成し、史実のエピソードを再現するため、歴史的事件や未解決事件の謎など、映像資料が存在しないテーマの表現に適しています。
過去の出来事を映像で可視化することで、特定の瞬間や感情を強調し、視聴者に深い理解を促すことができるでしょう。
ただし、再現によって真実性を損なうことがないよう、出来事の真相を正しく把握し、正確性と信憑性を確保した演出を心がける必要があります。
詩的表現型
詩的表現型ドキュメンタリーは、美しい映像に音や言葉を加え、環境や雰囲気を伝える表現手法です。例えば、自然や世界遺産などの映像に、ナレーションや音楽を乗せる演出などが該当します。
真実や出来事などの情報を伝えるのではなく、その場の雰囲気やトーンに重きを置くのが詩的表現型の特徴です。ドキュメンタリーよりも、芸術的な作品に近い映像といえるでしょう。
ドキュメンタリー動画制作の5つのコツ

より良いドキュメンタリー動画を制作するには、以下の5つのコツを意識することが大切です。
- 1.あからさまな演出を避ける
- 2.インサート映像を多数用意する
- 3.取材対象をさまざまなアングルから撮影する
- 4.起承転結を意識した構成にする
- 5.インタビュイーが話しやすい雰囲気を作る
1.あからさまな演出を避ける
撮影時にあからさまな演出を行なうと、ドキュメンタリーの良さであるリアリティを失ってしまう恐れがあります。
「ヤラセ」がバレてしまった途端、視聴者は興醒めしてしまいます。目の前で起きている事象を包み隠さず撮影し、偽りのないドキュメンタリー制作を心がけましょう。
2.インサート映像を多数用意する
内容やコンセプトにもよりますが、ドキュメンタリー動画では、動画の最中に使用するインサート動画が重要になるケースが多くあります。例えば、インタビュー動画で対象者の表情だけを紹介しても間延びしてしまう恐れがあります。映像に奥行きや物語性を持たせるためにも、その人物と関連性の高いものや状況のインサートを追加するとよいでしょう。
インサートが多くあると編集時に役立つので、インサートを多めに撮影することはぜひ覚えておいてください。
3.取材対象をさまざまなアングルから撮影する
取材の際は、対象をできるだけさまざまなアングルで撮影することも重要です。例えば、話をしている人物の表情だけでなく、作業をしている手もとや目線、背後からの様子など、さまざまな角度から押さえておきましょう。
こちらもインサートとして活用でき、より魅力的なドキュメント映像を制作するための素材となります。
4.起承転結を意識した構成にする
ドキュメンタリー動画で視聴者の心を揺さぶるには、起承転結を意識した構成が必要です。ドキュメンタリー動画では、以下のような内容で構成を作成します。
| 起 | テーマとなる登場人物や舞台などを設定し、視聴者を引きつける |
|---|---|
| 承 | 物語を展開するなかで、背景の深掘りや問題提起をする |
| 転 | 想定外の展開や葛藤、困難を描き、視聴者に緊張感を与える |
| 結 | 現在の成功や未来の展望などとともにメッセージを伝え、視聴者に強い印象を残す |
起承転結を意識したストーリーを作ると、視聴者の心をつかむだけでなく、強いメッセージを伝えることができます。ドキュメンタリー動画では起きた事実を伝えると同時に、視聴者がテーマに感情移入できるようなストーリーも不可欠です。
なお、初めてドキュメンタリー動画を制作する方は、起承転結が作りやすいテーマを選ぶのも一つの手です。困難な題材に挑戦したり、問題の克服に立ち向かったりするようなテーマなら、映像作品としてまとめやすいでしょう。
5.インタビュイーが話しやすい雰囲気を作る
インタビュー動画を撮影する際は、インタビュイー(取材対象者) の緊張をほぐす工夫が必要です。リラックスした雰囲気を作ることで、インタビュイーの自然な表情や話し方を引き出せます。撮影前やインタビュー中に、雑談やアイスブレイクを取り入れると、緊張を和らげることができるでしょう。
また、インタビューを成功させるには、聞き手が反応することも大切です。適度にうなずいたり、表情でリアクションをしたりして、インタビュイーが安心して話せる環境を作りましょう。
ただし、インタビュイーが熟考しているときは、邪魔をしないように待つ姿勢も必要です。
まとめ
ドキュメンタリー動画の制作では、アングルや撮影手法のバリエーション、インサートの撮影が重要となります。大掛かりな機材がなくても、少しの工夫で視聴者を惹きつける作品が制作できるのはドキュメンタリー作品の魅力です。
インタビューや風景など、テーマに合わせた撮影手法を用いることで効果的な映像を撮影できます。また、あからさまな演出は避けなければなりませんが、事実をただ並べるだけでなく、起承転結を意識したストーリーで視聴者を引き込む工夫が必要です。
決められた予算内で質の高いドキュメンタリー動画を撮影したい場合は、映像制作を請け負う「Shibuya Movie」 にご相談ください。
初めての映像制作の方にも、ご不安なくご利用いただけるよう制作の流れやご活用方法まで、
丁寧にご案内させていただきます。お客様の映像制作のゴールを達成するため、
企画〜撮影、完成まで専任チームが伴走いたします。



